No.437

News 25-04号 (通巻437号)

News

2025年04月25日発行

徳島文理大学高松駅キャンパス 開学!

 学校法人村崎学園が、創立130年記念事業の一環として計画を進めていた、徳島文理大学の高松駅キャンパスが、JR高松駅に隣接する敷地に完成し、この春に開学を迎えた。

 徳島文理大学は、これまで徳島と香川にそれぞれキャンパスを有し、香川県さぬき市志度(しど)の香川キャンパスが、この度、高松駅キャンパスに全面移転された。移転に伴い、新キャンパスには既存の薬学部、保健福祉学部、理工学部、文学部に加え、総合政策学部の経営学科が新設され、5学部10学科で構成されている。新キャンパスは、岡山からも電車で1時間ほどで通学可能な抜群のアクセスを誇る都市型キャンパスとして、新しくスタートした。高松駅周辺は、新しい香川県立アリーナがオープンし、27年開業予定の大型ホテルが建設中であるなど、四国の玄関口として駅前全体が大きく発展中である。

キャンパス外観

 

 高松駅キャンパスは、地上18階建ての高層棟(東棟)と、8階建ての低層棟(西棟)からなり、高層棟には、講義室や実習室、食堂、茶室などが、低層棟には、ムラサキキネンホール(以下、ホール)、図書室、アリーナ、屋外運動場などが整備された。充実した諸室に加え、各学部の実験機器や什器も一新された。また、高層棟と低層棟の間には、建築的なエキスパンションジョイントが設けられた。なお、志度の旧香川キャンパスは、課外活動や、大規模実験等で、これからも利用予定とのことである。

キャンパス外観(高松駅側)
施設平面

 設計は教育施設研究所、建築工事は西松建設、設備工事は四電工である。永田音響設計は、徳島キャンパスのむらさきホールの音響設計を担当しており、今プロジェクトにおいても、学園からの依頼で、基本・実施設計から施工段階、竣工時の音響検査測定まで、ホール関連の一連の音響設計を担当した。

◆騒音防止計画

 新キャンパスは、目の前を電車が走行し、ホールで十分な静けさを確保するためには厳しい条件であった。敷地地盤における鉄道振動の測定結果より、まず低層棟の外壁地下部分に地中外壁用防振材を設置し、さらに、ホールには防振ゴム支持による防振遮音構造(床と壁のみ防振、天井は固定スラブ表し)を採用して、2段階の固体伝搬音低減対策を行った。また、ホール直上の講義室やゼミ室の床は、ホールとの遮音性能の確保と上階での歩行音や什器の移動音を防止するために、発砲ポリエチレン緩衝材による浮床とした。竣工時の音響検査測定で、ホールでは鉄道騒音はまったく聞こえないことを確認した。また、上階講義室とホールの間の遮音性能は、75 dB(500Hz)以上が確保されている。

低層棟(西棟)断面
地中外壁用防振材の施工状況

◆ムラサキキネンホール

 800席のムラサキキネンホールの主用途は大講義室である。さらに、「学生に本物のコンサート体験を」という、昨年、新キャンパスの開学を待たず惜しくもご逝去された村崎正人前理事長の強い思いで、コンサートホールとしても利用できるよう計画された。ホールはシューボックス型を基本とし、舞台上部はスノコを表し、客席上部は音響的に透過なルーバーの視覚天井で構成して、それらの裏も音響空間として機能させる計画とした。天井裏のスラブ面までの高さは、舞台床から約14mである。

客席から舞台を望む

 ホール客席は、メインフロアとバルコニー1層の構成で、サイドバルコニー席を舞台の側方部まで伸ばし、舞台を横方向から鑑賞できるとともに、バルコニー下を天井庇として利用することで、舞台やメインフロアに反射音を有効に到達させる計画としている。

舞台から客席を望む

 客席天井のルーバーはアルミ製角パイプで、内部が中空で笛とならないようウレタンを充填し、小口も塞いだ。また、高音域までの音響透過を実現するために、断面寸法30mmx50mm角のパイプを75mm間隔で客席から見て凸面状に配列した。このパイプ寸法と凸面形状は、均等配列に起因する異音を目立たなくする意図もある。

客席視覚天井

 大講義室を授業や講演会、式典で使用する際には、吸音バナーを降ろすことで響きの長さを調整できる。吸音バナーは、視覚天井の裏に巻き上げ、幕だまりができるだけ露出しないよう鉄板で囲っている。竣工時の試聴では、スピーチ再生、マイク拡声いずれも、明瞭な拡声が行えることを確認した。

吸音バナー設置時

 3月11日、新しい校舎で開学式が催された。定礎式に引き続き、ムラサキキネンホールで記念式典が行われ、式典の前には、ウェルカム演奏として木管アンサンブルの演奏が披露された。式典ということで、吸音バナーが設置された状態ではあったが、美しい上質な響きを楽しむことができた。
 前理事長の思いは、ご子息である村崎文彦新理事長に受け継がれ、「学生が街に出て、街に学び、本物の体験ができる」新キャンパスがスタートした。これからの徳島文理大学が楽しみである。(酒巻文彰記)

徳島文理大学高松駅キャンパス