No.444

News 26-04 (通巻444号)

News

2026年04月25日発行

氷都苫小牧に「苫小牧市民文化ホール ART CUBES」がオープン

 北海道苫小牧市は、王子製紙の製紙工場のほか、港湾物流の拠点としても栄える、北海道でも有数の工業・物流都市である。一方で、白鳥の飛来するウトナイ湖や、勇払平野などを一望できる樽前山など、北海道ならではの雄大な自然にも触れられる、観光にも魅力的な都市である。このたび、苫小牧市に新たな文化拠点、「苫小牧市民文化ホール ART CUBES」が3月1日にオープンした。
 2021年、苫小牧市は、既存の文化会館、市民会館を改築するとともに、労働福祉センターや交通安全センター等の機能を統合した新たな施設の整備・運営を行う事業者を公募し、鹿島建設を代表企業とするSPC(氷都とまこまいパートナーズ)が優先交渉権を得た。
 本施設の建築設計は久米設計、施工は鹿島・岩倉建設・菱中建設・盛興特定建設工事共同企業体が行った。永田音響設計は設計から竣工時の音響検査測定までの一連の音響コンサルティング業務を担当した。

施設外観※ ©川澄・小林研二写真事務所
エントランスホール※ ©川澄・小林研二写真事務所

◆施設概要

 本施設は、大きさの異なる白いハコを積み重ねたような外観が特徴の施設である。「氷都 苫小牧」の愛称から、積み重なった氷がイメージされており、広報とまこまい 令和8年2月号によると「その氷がとけだし、ひろがるように、多彩な文化創造活動や舞台芸術の体験が施設からまちへとひろがり、人と人が文化でつながり合い、苫小牧から全国、そして世界へと、文化芸術の輪をひろげていきます。」と説明されている。施設は4階建てで、大ホールと小ホール、アートスペース(平土間の多目的室)といった、大きな室を西側、東側、南西側に離隔して配置している。この間にできた空間に、スタジオや会議室(ルーム)、ギャラリーやアトリエ、和室といった小部屋を点在させるとともに、エントランスホールに面して、楽器演奏も想定したライブステージを設けて、市民の日常的な活動拠点や賑わいを創出する空間を施設中心に据え、相互の交流を促す計画になっている。

施設平面図

◆大ホール(グランドホール)の室内音響計画

 大ホール(1200席)は、多様な文化創造活動の中心施設として計画された。本ホールは、1層のバルコニーを有するプロセニアム型の多目的ホールである。多くの客席を収容しつつも舞台との距離を近くするため、客席後方に向かって側壁が緩やかに広がる形状となっている。4段の庇が、室全体をぐるりと囲う意匠が特徴的である。
 室用途としては、舞台反射板設置時における生音のコンサートから、舞台幕設置時における演劇、ポピュラーミュージックや講演会など、様々な使われ方が想定されている。これらの用途に適した響きが得られるよう、室内音響計画を行った。まず、生音に対する豊かな響きと有効な反射音が得られるよう、天井高をできるだけ高く取り(舞台上で11 m、客席で最大16 m)、舞台・客席全体に反射音が到達するよう計画した。特に客席幅が緩やかに広がることで遅れて到来する反射音を、庇を設けることで早めに客席に届けるようにした。また、壁面の主要部は特殊型枠を用いたコンクリート打放し仕上げで、その表面を幅35mm、間隔13~28mmのリブ形状とし、客席に近い壁面からの強い反射音を和らげる効果を期待した。
 竣工時に測定した残響時間(空席時,500 Hz)は、コンサート形式(舞台反射板設置時)で2.2秒、講演会形式(舞台幕設置)で1.5秒であった。舞台反射板から舞台幕への転換でかなり響きが短くなり、多様な演目に対応できると考えている。

グランドホール内観-舞台※ ©川澄・小林研二写真事務所
グランドホール内観-客席※ ©川澄・小林研二写真事務所

◆小ホール(マルチホール)の室内音響計画

 小ホール(400席)は移動観覧席を有するホールである。リサイタルや講演会、展示会、社交ダンスなどの利用が想定されている。上手側壁の一部は移動遮音間仕切り壁となっており、これを開放して屋外までを一体的に利用することもできる。
 室形状は幅17m、奥行き28m、高さ12.7mの直方形である。舞台側面壁は回転式で、この部分の開閉と幕設置により、多様な催しに対応する計画となっている。
 壁面には、一部敷地に自生していた樹木を伐採・乾燥させて製作した丸太半割のルーバー材を設置し、そこからの柔らかな反射音を期待した。また、壁面から連続的に繋がるルーバーで構成された視覚天井より上部の側壁面に吸音カーテンを設置し、移動観覧席収納時に残響過多とならないよう配慮した。
 竣工時に測定した移動観覧席設置時の残響時間(空席時,500 Hz)は、リサイタル形式(舞台反射板:閉、舞台幕/カーテン収納)で1.2秒、講演会形式(舞台反射板:開、舞台幕/カーテン設置)で1.0秒である。また、移動観覧席収納時(舞台反射板:閉、舞台幕収納、カーテン設置、展示会などの利用)は、空室で1.4秒である。

マルチホール内観-舞台※ ©川澄・小林研二写真事務所
マルチホール内観-客席(移動観覧席設置時)※ ©川澄・小林研二写真事務所
マルチホール内観-客席(移動観覧席収納時)※ ©川澄・小林研二写真事務所

◆施設の遮音計画

 本施設の遮音計画においては、施設の特徴である室の分散配置により基本的な室間遮音性能を確保している。その上で、楽器演奏などが想定されるアートスペースとスタジオ1~3に防振遮音構造を採用し、様々な用途で各室の同時利用を可能とした。
 竣工時の遮音測定では、アートスペースやスタジオ1~3と、グランドホールやマルチホール間でDr-85の遮音性能が得られた。また、低音域についても、アートスペースやスタジオ側の大音量が、ホール側ではほぼ聞こえないほどの性能が確保された。スタジオ各室で和太鼓練習等を行い、ホール側ではクラシックコンサートの催しを行うなどといった、極端な組合せでない限り、同時利用可能と考えている。

◆オープニングと今後

 竣工記念式典では、さっそくエントランスホールでのロビーコンサートが催され、活気あふれるオープニングとなった。本施設の建設に伴って、敷地南側の旧市民会館は3月31日に閉館となり、解体がはじまっている。今後は、この場所の外構工事が進み2027年4月末にはシアターパークとして生まれ変わる。
 北の大地の雄大な自然に触れ、おいしい海の幸を堪能しつつ、新たなホールでの芸術鑑賞をご予定されてはいかがだろうか。(和田竜一記)

エントランスホールでのロビーコンサート

施設ホームページ https://www.tomakomai-hall.jp/
※写真提供:苫小牧市民文化ホール ART CUBES