◆ディーク氏の講演から、フィスク社の理念とフィスク氏について ディーク氏が所属するフィスク社の創設者故フィスク氏は、当時商業オルガン全盛のアメリカで始めて歴史的オルガンの建造に取り組まれたビルダーである。本人は物理学を専攻されていただけに、ヨーロッパの伝統工芸的なビルダーとはちがった観点でオルガンを手掛けたのではないだろうか。現在でも軽い鍵盤機構の開発、スウェル機構の音量変化の範囲の拡大など、技術革新をこのフィスク社は続けている。講演会の席でも、新しい機構の紹介があった。 フィスク氏はたんにオルガン職人ではなく、“He was a great man.”といわれているように、人間味溢れたいい意味での大親分であったようで、多くのオルガンビルダーが彼の工房から輩出している。ルーダース氏もフィスク氏の次のような言葉を紹介した。“オルガンビルダーは自分の頭の中に鳴っている音を実現することです。” 昨年フィスク社を尋ねた時の印象であるが、工房の殆どの人がオルガンを弾く。オープンで、技術レベルで何の抵抗もなく話しあえる雰囲気が心地良かった。音楽に対しての感性と、技術への関心がうまくバランスしている工房であった。