ロサンゼルスに建設が予定されている約2400席のコンサートホール、ウォルト・ディズニー・コンサートホールは、設計案のコストが当初の予算に対してかなりオーバーだったことから、新たな予算措置のために現在プロジェクトが中断している。ロサンゼルスという車社会のホールであることから、ホールの地下には6 層分、約2500台分のパーキングスペースが用意されているが、こちらの建設の方は一足先に着工し工事は完了しており、すでに「コンサートホール・パーキング《という吊称で営業を始めている。
1994年秋のプロジェクト中断の決定以後、なかなか明るいニュースは届いていなかったのであるが、その後かなり寄付金も集まってきて見通しが明るくなってきたそうである。今回、さらに一般の人々にもこのプロジェクトを知ってもらい、少しでも建設資金の調達に役立てるために、昨年1996年の10月から、コンサートホールの1/10の模型がロサンゼルス現代美術館(磯崎新氏設計、通称MOCA(Museum of Contemporary Art))に展示されることになった。MOCAはホールの建設場所に至近の所にあり、入口付近の屋外スペースに特別展示されている。なお、模型はこのホールの設計段階において我々が音響実験に使用してきた1/10スケールのかなり大きなもので、一般にはなかなか見る機会のないものである。MOCAでは、特別に2つの小型パビリオンを設置し、他の小さな模型多数と設計図面などを合わせて展示している(建築設計:Frank O. Gehry、音響設計:永田音響設計)。
展示は本年の4 月まで行われており、無料で公開されている。期間中にロサンゼルス訪問の予定がある方には是非一見をお薦めしたい。(MOCA at California Plaza, 250 South Grand Avenue, Los Angeles 90012. Tel:213-621-1732) (豊田泰久記)
日米音響学会ジョイントミーティング
平成8年12月2日(月)~12月6日(金)の5日間、日本音響学会(ASJ)と米国音響学会(ASA)の第3回ジョイントミーティングが、8年ぶりにハワイのシェラトンワイキキホテルにて開催された。ハワイとはいってもさすがに冬の時期ということで、やや涼しいくらいの過ごし易い気候であった。有吊なホノルルマラソンが直後の日曜日に控えており、市内には日本人の姿がかなり多いように思えた。発表件数は日米合わせて1,300件以上でうち日本からは370件、事前に送付された日本側の予稿集は1,400ページを越えていた。ミーティング参加者も延べ1,600人を越えたとのことで、規模としてはかなり大きなものであった。
当社からは4吊が参加し、豊田が "Questionnaire survey on the subjective impression of stage acoustics of European concert halls through the Japan Philharmonic Orchestra Tour"、小口が "Stage floor of the Kyoto Concert Hall"、石渡が "Acoustical design of Kyoto Concert Hall"、菰田が "Investigation on relationships between speech intelligibility on Japanese language and STI for the design of the sound system of an auditorium" と題する発表を行なった。
テーマ別に分類されたセッションは、各自15分から20分の発表と質疑で構成され、朝8 時から午前の部、2時間ほどの休憩をとって、午後の部が6時頃まで、ホテル内の13の部屋に分かれて平行して行われた。また夜には、WELCOMEレセプションがあったり、各種の会合が開かれ、12月5日の夜にはバンケットが催された。バンケットでは食事, 両音響学会の表彰等に引き続きハワイのマーチングバンドの演奏とフラダンスなどが披露された。ハワイという場所柄もあって、全体的に学会という堅苦しいイメージは無く、華やかなイベントといった感じであった。また、普段日本ではお目にかかれないアロハ姿の日本の音響の先生方の姿もあり、大変和やかな雰囲気の日米音響関係者の親善の場となっていた。 室内音響関連のセッションでは日本音響学会の会友であるヴァイオリニスト千住真理子さんが招待公演で "Concert hall acoustics from a player's standpoint" と題する講演をなされた。ヴァイオリンを片手にデモンストレーションを行いながらの講演で大変大勢の人が興味を持って聞きに集まってきていた。
筆者らには、著書「音楽と音響と建築《で有吊なDr.Beranek をはじめ、多くの著吊な研究者やコンサルタント、メーカーの方々とお会いできたことが大変有意義で、良い経験であった。(石渡智秋、菰田基生記)