さて、シンポジウム初日は夕方からのオープニングセッションのみで、発表は2,3 日目に集中して行なわれた。発表件数は、テーマを掲げた5 つの招待講演セッションとそれにほぼ関連した投稿論文講演のセッションで合計85編という数で、通常の学会に比べて大変盛況であった。筆者は、"Spaces for Music Performance"のセッションで、永田の論文" Concert organs and acoustical design"を代読した。 我々はコンサートホール建設ブームの中で、オルガン導入にまつわる幾つかの問題に直面してきた。オルガンに必要な高い天井高と一般の楽器の演奏のし易さのためのほどほどの天井高との兼ね合いや、響きの長さの設定に関わる問題などである。永田の論文ではこうした問題点を指摘した上で、ステージ上の演奏のし易さを確保するための反射板の設置、室形状の工夫、低音パイプを閉管で構成した例などを紹介した。また、響きの長さについては、福島市音楽堂の満席時2.5 秒という残響がオーケストラ演奏にとって上限であることを述べた。合わせて、オルガンの音響パワーや吸音特性の測定例、また、コンサートオルガンのための残響付加システムの導入例などにも言及した。
このセッションの座長は2 本あるコンサートホールの最適残響時間カーブの短い方を提唱したC.M.Harrisで、P.S.Veneklasenの特別講演でスタートし、今最も活躍している音響コンサルタントC.Jaffe, 永田(小口代読), R.Johnson, C.W.Day (Marshall Day Assoc.),R.L.Kirkegaard等が次々に演壇に上った。永田以外はみなステージ音響を取り上げていた。デイビス・シンフォニーホール(サンフランシスコ)やエイブリー・フィッシャーホール(ニューヨーク)のステージ改修を皮切りに、フィラデルフィア、シカゴ、ボストンなどビッグ5のオーケストラの本拠地が軒並み、ステージまわりを中心とした音響改修に乗り出している。 その他の招待講演では、L.L.Beranekによる歴史的レビューに関するセッション、M.R.Schroederの室内音響理論に関するセッション、M.Barronのホールの測定に関するセッションなどが設けられていた。